お家童話ひょこタン

せつない、おねしょシーツ。

「うちな、夜寝るときが一番キライ。みんなが寝てて、うちだけが眠れずに起きてる。お父ちゃん、お母ちゃん、お姉ちゃん、どうしてるんかなって思ったら、気が狂いそうになるねん」まさみちゃんは、いろいろなことをひょこタンに話してくれるようになりまし…

シャブ中のお父ちゃん。

『常輝園』で会ったまさみちゃんのお父さんは、ねずみ色の作業服の上下を着ていました。ずっと優しそうにニコニコ笑っていて、まさみちゃんと一緒にバザーの品々を見てまわりました。そして、誰かのおさがりのスクール水着を売っている場所で立ち止まり、「…

サラ金地獄で一家離散。

『キャンディ キャンディ』のキャンディやアニー、『赤毛のアン』のアン、愉快なムーミン一家のムーミンパパはみんな、孤児院育ち。両親を亡くしているからこそ、家族とは一緒に住めない、自分の家では暮らせないのだということを読書家のひょこタンは知って…

まさみちゃんの『家』は、児童養護施設。

ひょこタンのお友達、まさみちゃんが住んでいるのは『常輝園』という所。他にも顔見知りの子達が何人か住んでいることもあり、ひょこタンは何度か遊びに行かせてもらったこともあります。まさみちゃんは、小学4年生。3年生と4年生の女の子5人と、寮母さんと…

スイカを食べられなかったひょこタン。

ひょこタンは、食べ物の好き嫌いが多い子です。お肉やお魚は食べられますが、野菜はほとんど嫌い。晩ご飯のおかずが食べられないことがよくあって、お母さんに怒られてばかりです。ある夏の日は、どんなに叱られても白菜を食べなかったからといって、デザー…

ひょこタン、飛行機に慣れる。

ひょこタンは社宅から新しい家に引越して来て、ビックリ。まるで家に落ちて来るかのように、手が届きそうなぐらいの低空を一日に何度も、巨大な飛行機が飛ぶのです。そのたびにそれは大きな音がして、テレビの音も、電話での話し声も、家族の声さえも聞こえ…

ひょこタン、お留守番で罪をつくる。

ひょこタンはその日、お留守番をしていました。お母さんからは、新聞屋さんの集金が来たらお金を払っておくようにと、お財布を預かりました。やって来た新聞屋さんは、顔なじみのおじさんではなく知らないお兄さんだったのですが、お財布から必要な枚数の千…

ひょこタン、空家で峰不二子をキドル。

ひょこタンが住んでいた社宅では、たまに住人の入れ替わりがあると、数日間だけ、一戸が空家になることがありました。そんな時は、社宅に住む子ども達は、喜び勇んで空家に入り込んで遊びました。うっすらと積もり始めたホコリ、ひんやりとした空気、家具が…

ひょこタンと社宅と子ども部屋。

ひょこタンは、今よりもっと小さい頃、お父さんが働く会社の社宅に住んでいました。社宅と言ってもマンションやハイツのような所ではなく、4つのいろいろな形の家に、4つのいろいろな家族が住んでいて、みんなの共有の広い裏庭や前庭がある、それは素敵な所…

ひょこタンと仮面ライダースナック。

ひょこタン家では、“食べ物は家で食べること”と決められていました。お小遣いをもらって、駄菓子屋さんでお菓子を買うことは許されていましたが、買った物は家に持ち帰ってから食べることになっていました。『仮面ライダースナック』が大流行した時、全然口…

ひょこタンと泥棒。

ひょこタンのお父さんは、なかなかの風流人です。さつきやつつじなど、丹精こめた見事な盆栽をたくさん育てています。『庭』というほどのものはないので、門扉の外の玄関先に階段状の棚をしつらえてズラッと並べてあります。しかし、悲しいことに、夜の間に…

ひょこタンとトマトジュース。

ひょこタンが初めてトマトジュースを飲んだのは、ご近所のお友達のお家。お友達の優しそうなお母さんが、わざわざジューサーミキサーで作ってくれました。トマト自体が苦手だったひょこタンですが、せっかくなのでがんばって飲めるだけは飲みました。甘いフ…

ひょこタンとタイルの国。

ひょこタンちのトイレとお風呂はタイル張り。黒、茶、点々模様の大小様々な形のタイル張り。タイルは可憐なお姫様のほっそりとした輪郭や、つやつやした黒髪に見える。タイルは恐ろしい女王様の顔と、高く結い上げたヘアスタイルに見える。トイレに座ったま…