ひょこタンと泥棒。

ひょこタンのお父さんは、なかなかの風流人です。
さつきやつつじなど、丹精こめた見事な盆栽をたくさん育てています。
『庭』というほどのものはないので、門扉の外の玄関先に
階段状の棚をしつらえてズラッと並べてあります。
しかし、悲しいことに、夜の間に大切な盆栽を盗んでいく人達がいるのです。
いつしか盆栽は、必ず針金や紐や鎖で棚に縛りつけなければならなくなりました。
またお勝手口を出た所にある、家の裏の小さなスペースにはプラスチック製の変な形の『池』が置いてあり、このニセ池では鯉を飼っていました。
ところがやっぱり誰かが盗むのか、何かが狩るのか、鯉も無事ではいられないのでした。
残った鯉は大きなガラスの水槽に移され、重い蓋をかぶせられました。
そして家族で出かけて帰ってきた時にはお巡りさんがやって来て、
「留守中のお宅をルンペンがのぞいていましたよ。これからはよく気をつけてください」ですって。
ひょこタンはルンペンというのが何のことかもわからないのですが、ただもう恐ろしくて。
安全なはずのお家なのに、何でもかんでも盗まれたり、いなくなったり、狙われたりすることがとても不思議で、情けなくて、悲しかったのでした。