小林薫被告にとっての家とは?

ミステリー好きが高じて、犯罪捜査のドキュメンタリーや犯罪心理のノンフィクションなどもよく手に取ります。

『羊達の沈黙』や『検屍官』で有名になったプロファイル。
事件の様態や残された痕跡から犯人を科学的に推理していくことで、
30歳代・独身男性・白人・高学歴・ホワイトカラー・自家用車と持ち家アリ・・・なんてことを次々に特定し、犯人像を絞りこんでいくわけです。

奈良女児殺害事件の小林薫被告やトーレス ヤケ被告の場合など、
幼い子を誘拐・殺害、死体遺棄し、さらには死体損壊などもあったということですから、
恐らくプロファイリングでは“独身男性”“一人暮らし”などのワードが早くからあがっていたのではないでしょうか。
人目を気にせず悪事を働ける場所=自宅が必要だったわけですから。

しかし。
膨大な数のビデオが積み上げられている自室の様子がセンセーショナルに報道された、宮崎勤被告は家族と同居していました。
新潟の少女監禁事件でも、古くは女子高生コンクリート詰殺人事件でも、家族と同居する家の中で少女らは長期間監禁されていたのです。

自分が暮らしている家の中で、家族が監禁や殺人を行うなんて。
ましてやそれに気がつかない、気がついても見て見ぬふりをするなんて、考えられますか?

たとえ家族と暮らしていても、顔をあわせて挨拶をしたり、一緒にご飯を食べながら今日あったことを話したりする人間関係や、相手を気にかけ、関心を持つ心がないのなら、家族と言えども他人以上に無関心なただの同居人。家はただのハコでしかないということでしょうか。

被害者のためにも、
加害者が犯罪を犯す前に、人生で出会ってきた周囲の誰かが、どこかの時点で何とかできなかったのかといつも本当に残念に思います。
もし加害者にとっての家が、自宅=悪事のための場所ではなく、
甘えたり、優しくされたり、楽しいことや大切なものがいっぱい詰まった幸せな場所だったら・・・と考えずにはいられません。